別表四と別表五(一)のそれぞれの役割を今まで見てきました。ここでは、法人税法上の「損益計算書である別表四」と「貸借対照表である別表五(一)」の関係をみていきましょう。
別表四・別表五(一)の役割
(1) 別表四の役割
別表四は、法人税の課税標準である所得金額を計算する場所でしたね。その内容は、次のとおりでした。
(ポイント)
- 会計上の利益に申告調整項目を処理して、法人税法上の所得金額を計算するため、「税務損益計算書」といわれています。
- 税務調整項目は、加算項目と減算項目の2つがあります。
- 会社の利益に加算する申告調整項目に益金算入・損金不算入の2つがあります。
- 会社の利益に減算する申告調整項目に益金不算入・損金算入の2つがあります。
- これらの申告調整事項は、その内容により「留保」と「社外流出」にわかれます。
(2)別表五(一)の役割
別表五(一)は、法人税の利益積立金額を計算する場所でしたね。その内容は、次のとおりでした。
(ポイント)
- 法人税法上の利益積立金額を計算するため、「税務貸借対照表」といわれています。
- 未納法人税等は、利益積立金額から控除し、「△」で表示します。
- 納税充当金は、利益積立金額に加算します。
別表四と別表五(一)との関係
別表四の申告調整事項は、「留保」と「社外流出」の2つに区分できますが、別表五(一)に関係するのは、そのうち「留保」になります。
つまり、留保項目が当期の利益積立金額に反映されることになります。留保項目の調整は、その内容の区分により次のようになります。
(1) その発生した調整項目が利益積立金を増加させるもの
- 利益積立金を増加させる場合
留保項目でも、その申告調整事項が利益積立金を増加させる場合とは、次のようなことをいいます。
- 減価償却資産などの資産を費用処理したものが、税法上資産となるような場合
- 売上などの収益を少なく計上していた場合
- 仕入などの原価(費用)を多く計上した場合
- 簿外資産を計上した場合など
- 実際の処理
- 別表四の処理
(A)加算項目
別表四で留保項目で加算されるものは、別表五(一)の3.「増」にその金額を記入します。
(B)減算項目
別表四で留保項目で減算されるものは、別表五(一)の2.「減」にその金額を記入します。
(2) その発生した調整項目が利益積立金を減少させるもの
- 利益積立金を減少させる場合
留保項目でも、その申告調整が利益積立金を減少させる場合とは、次のようなことをいいます。
- 架空資産や簿外負債などを計上した場合
- 売上などの収益を多く計上していた場合など
- 仕入などの原価(費用)を少なく計上した場合など
- 実際の処理
- 別表四の処理
(A)加算項目
別表四で留保項目で加算されるものは、別表五(一)の2.「減」にその金額を「△」で記入します。
(B)減算項目
別表四で留保項目で減算されるものは、別表五(一)の3.「増」にその金額を「△」で記入します。
税効果会計との関係
みなさんも税効果会計という言葉を聞いたことがあると思います。ここで今までのことを思い出しながら、税効果会計関連について見ていきましょう。
(1) 税効果会計の対象
別表四で調整する申告調整事項には、留保項目と社外流出項目がありましたね。このうち、税効果対象となるのは、留保項目だけです。
社外流出項目は、法人税法の特有の考え方で、その事業年度で課税関係が完結してしまうものです。
これに対して留保項目は、翌事業年度以降に関係してくるので、利益積立金額を構成するものです。
留保項目は「一時差異」と呼ばれ、社外流出項目は、「永久差異」と呼ばれます。
(2) 一時差異・永久差異の内容
- 一時差異
一時差異には、別表四で留保項目となるものの他、次のものは留保項目ではありませんが、一時差異と同様に扱います。(「みなし一時差異」といいます。)
- 繰越欠損金の繰越控除規定
- 繰越外国税額控除規
- 永久差異
一時差異以外のものをいいます。
(3) 税効果会計の考え方
税効果会計は、これまで税法に従い会計処理していました一時差異をその事実の発生に基づいて、会計上の当期利益と法人税などを適正に期間配分しようとするものです。
本書の対象となる決算月(一年決算の場合)
この「税務申告」の内容は平成13年3月〜平成14年2月が決算月となる法人を対象としています。税制に関する法令等は改正されることが多いため、必ず対象となる決算月を確認してください。
なお文書内容は平成12年9月現在の税法等に基づいて作成されています。
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