法人から個人が配当等を受ける場合、所得税において「配当控除」の規定を設けて、二重課税を回避しています。同様に法人についても、法人税法上で「受取配当等の益金不算入」の規定が設けられています。つまり、配当等のもとになる法人所得について受取配当がある場合、その配当金についても税金が課税されると個人株主に配当するまでに、二重に課税されてしまうからです。
この計算には、「別表八」の「受取配当等の益金不算入に関する明細書」を使用します。また、「別表四」においては「減算・社外流出(※印の便宜上のもの)項目」となります。
受取配当等の益金不算入額
(1)益金不算入額の計算
各事業年度の益金の額に算入しない金額は、次の算式により計算した合計金額となります。
- (特定株式等以外の受取配当等の額−特定株式以外の負債利子の額)×80%
- 特定株式等にかかる受取配当等の額−特定株式等にかかる控除負債利子の額
つまり、特定株式等に係る配当額は、全額益金不算入になるのに対し、特定株式等以外のものは、益金不算入額の80%相当額となります。
(2)特定株式等の意味
特定株式等とは、内国法人(公益法人等及び人格のない社団等を除く)の発行済株式又は出資金額の25%以上を、その配当等の額の支払義務が確定する日以前6ヶ月以上有している株式又は出資をいいます。
受取配当等の範囲
(1)益金不算入となる配当等の範囲
受取配当等の益金不算入額の対象となる金額は、次のとおりです。
- 利益の配当(中間配当による金銭の分配を含む)
- 剰余金の分配(出資に係るものに限る)
- 証券投資信託の収益の分配(公社債投資信託・特定株式投資信託を除く)については、その区分により次のとおりです。
- 外貨通貨表示以外にかかる収益の分配は、その分配額の1/2相当額
※オープン型の証券投資信託の場合は、その分配額から特別分配金を控除します。
投資信託の終了または一部解約の場合は、その受取金額からその簿価と元本相当額のいずれか少ない額を控除します。
- 外貨通貨表示にかかる収益の分配は、その分配額の1/4相当額
※信託約款において信託財産の75%以下を外国証券等で運用することができるとされている、証券投資信託の収益の分配金に限られます。
- 特定株式投資信託の収益の分配
- みなし配当
(2)益金不算入とならない配当等の範囲
- 範囲
次の配当金または分配金については、「支払法人で損金処理していること・株主等として支払を受けていないこと・そもそも二重課税に関係しないこと」を理由として益金不算入の対象とならないものです。
- 協同組合等の事業分量配当
- 建設利息の配当
- 相互保険会社の基金利息及び契約者配当金
- 名義書換失念株に基づく配当金
- 資本積立金の資本組み入れ
- 外国法人・公益法人等・人格のない社団等から受ける配当金または分配金
- 短期所有株式等にかかる受取配当等
- 短期所有株式等の意味
「短期所有株式等」とは、法人が受ける配当等の額の元本である株式等をその配当等の計算基礎期間の末日以前1ヶ月以内に取得し、かつ、末日後2ヶ月以内に譲渡した場合におけるその譲渡した株式等をいいます。短期所有株式等の規定が無いと、配当の受領を目的として課税回避行為が行われるおそれがあります。配当交付後、通常は、配当権利落ちとして株価等が下落しますが、その下落による株式等の売却損が損金となり、配当が益金不算入である場合には、課税回避となってしまうことを避けるためにこの規定が設けられ、益金算入されることとなっています。
控除負債利子
控除負債利子の計算については、次の2つの方法があります。法人税法では、原則法の代わりに簡便法による方法も認めています。
(1)原則法
(2)簡便法
※基準年度とは、平成10年4月1日から平成12年3月31日までの間に開始した各事業年度をいい、負債利子の額は、特定利子を含むことに注意して下さい。
(3)負債利子及び特定利子の範囲
- 負債利子の範囲
負債利子とは、手形の割引料及び社債発行差金その他経済的性質が利子に準じるものをいいます。その他のもので注意すべきものは、次のとおりです。
- 固定資産又は繰延資産の取得価額に算入した借入利息
- 利子税又は地方税の延滞金(これは、会社の任意で含めないこともできます)
- 特定利子の範囲
特定利子とは、次のようなものをいいます。
- 社債の利子(社債発行差金を含む)
- 金融機関及び国等から借入金でその返済期間が3年以上のものにかかる利子
- 商品の販売等の対価として受け取った手形の割引料
※特定利子には、通常の法人又は個人からの借入金利子・融通手形の割引料等は該当しませんので注意して下さい。
本書の対象となる決算月(一年決算の場合)
この「税務申告」の内容は平成13年3月〜平成14年2月が決算月となる法人を対象としています。税制に関する法令等は改正されることが多いため、必ず対象となる決算月を確認してください。
なお文書内容は平成12年9月現在の税法等に基づいて作成されています。