有価証券の範囲
有価証券とは、国債・地方債・社債・転換社債・新株引受権付社債・出資金・株式・受益証券及び有価証券に準じる国内外コマーシャルペーパー等をいいます。
有価証券の損益計上時期及び譲渡損益の計算
(1)損益計上時期
有価証券の譲渡損益は、譲渡契約をした日の属する事業年度に計上します(約定基準)。
(2)譲渡損益の計算
有価証券の譲渡損益の額は、譲渡対価の額から譲渡原価の額を控除して計算されます。
譲渡原価の額の計算方法は、次のとおりです。
有価証券の区分
有価証券の一単位当たりの帳簿価額は、売買目的有価証券、満期保有目的等有価証券及びその他有価証券ごとに区分し、かつ、同一銘柄ごとに、移動平均法又は総平均法により算出します。
有価証券の区分は従来の上場有価証券と非上場有価証券と異なりますので注意してください。この有価証券区分における各有価証券の内容は、次の通りです。
売買目的有価証券(企業支配株式に該当するものを除く) |
短期売買目的で取得したものとして、その取得の日にその旨を帳簿書類に記載した有価証券 |
満期保有目的等有価証券 |
償還期限の定めのある有価証券(売買目的有価証券を除く)のうち、その償還期限まで保有する目的で取得し、その取得の日にその旨を帳簿書類に記載した有価証券
企業支配株式に該当する有価証券 ※ |
その他の有価証券 |
上記に該当しない有価証券 |
※企業支配株式とは、法人の特殊関係株主等が発行済株式の総数又は出資金額の20%以上を保有する場合のその株式又は出資
評価方法
有価証券の評価方法は、有価証券の区分ごとにその評価方法が定められています。
(1)売買目的有価証券
売買目的有価証券は、期末において時価評価し、洗替方式により評価損益を益金の額又は損金の額算入します(原価法)。
(2)売買目的外有価証券
売買目的外有価証券は、その期末帳簿価額をもって期末評価額とします(原価法)。
※償還期限等の定めの有るものは、帳簿価額と償還金額との差額のうち当期に配分すべき金額を増減した金額を期末帳簿価額とし、その増減額を益金の額又は損金の額に算入します(償却原価法)。
(3)低価法の廃止
従来、上場有価証券に認められていた低価法は、今回の税制改正により廃止されました。
(4)まとめ
有価証券の評価方法をまとめると次のようになります。
有価証券の区分 |
帳簿価額 |
期末評価 |
売買目的有価証券 |
移動平均法 又は 総平均法 |
時価法 |
売買目的外有価証券 |
満期保有目的等有価証券 |
原価法(償還期限及び償還金額の定めのあるものは償却原価法) |
その他有価証券 |
(5)デリバティブ取引
期末において未決済となっているデリバティブ取引がある場合、期末において決済をしたものとみなして算出した利益の額又は損失の額に相当する金額を、洗替方式により益金の額又は損金の額に算入されることになりました。
(6)用語の説明
- 総平均法
総平均法とは、同一種類・銘柄等ごとに、有価証券の期首評価額とその事業年度に取得した有価証券の取得価額との合計額を保有総数量で除し、平均単価を計算し、その単価をもとに評価する方法です。
- 移動平均法
移動平均法とは、同一種類・銘柄等ごとに有価証券を取得するたびに、その時までの評価額とその取得した有価証券の取得価額の合計を保有総数量で除し、平均単価を改定することにより計算する方法です。
- 洗替方式
洗替方式とは、期末に一度取得価額(原価)に戻し、期末に原価と時価とを比較して、その差額を益金の額又は損金の額に算入する方法です。
評価方法の選定及び届出
棚卸資産の評価方法は、その区分ごと、かつ、その種類ごとに選択することとなっています。
(1)「有価証券の評価方法の届出書」
法人が有価証券を取得した場合は、その事業年度の確定申告書の提出期限までに、選択しようとする評価方法を記載した「有価証券の評価方法の届出書」を所轄税務署長に提出することになっています。
(2)「変更承認申請書」
有価証券の評価方法を変更しようとする時は、変更しようとする事業年度の開始の日の前日までに変更理由等を記載した「変更承認申請書」を税務署長に提出しなければなりません。その事業年度終了の日までに承認又は却下の処分が無い場合は、承認されたものとして取り扱います。
(3)3年間の継続適用
特別な理由がある場合を除き、一度選択した評価方法を採用してから3年を経過していないときは、変更承認は認められませんので注意してください。
(4)法定評価方法
有価証券の取得価額
有価証券の取得価額は、その取得形態の違いにより次の表のようになっています。
取得形態 |
取得価額 |
払込 |
払込金額 |
新株等を有利な発行
価額で引き受けたときの払込み |
払込期日における価額(時価) |
購入 |
購入代金(購入手数料その他、有価証券の購入のために要した費用を含みます) |
合併・出資・株式交換又は株式移転により受入 |
受入価額(その有価証券の受け入れのために要した費用を含む。但し、取得のために通常要する価額(時価)を超える場合には、その価額(時価)となります) |
合併により交付を受けた |
1日株の帳簿価額に相当する金額他 |
上記以外(交換贈与等) |
有価証券の取得のために通常要する価額(時価) |
本書の対象となる決算月(一年決算の場合)
この「税務申告」の内容は平成13年3月〜平成14年2月が決算月となる法人を対象としています。税制に関する法令等は改正されることが多いため、必ず対象となる決算月を確認してください。
なお文書内容は平成12年9月現在の税法等に基づいて作成されています。