[5]総合課税・分離課税
所得に対する課税方法として「総合課税」「分離課税」の2種類があります。
A 総合課税
総合の名のとおり全ての所得を合計して税額を計算するもので、通常の申告によるものは、だいたいこれに該当します。総合課税される所得は次のとおりで、通常であれば申告書(一般)により確定申告することになります。
・利子所得 | ・配当所得 | ・不動産所得 |
・事業所得 | ・給与所得 | ・総合課税の譲渡所得 |
・一時所得 | ・雑所得 |
B 分離課税
総合課税が所得を合計して課税されるのに対し、分離課税は「分離」の名のとおり、それぞれの所得を別々に計算して、
税額を計算するものです。この分離課税される所得は次のとおりです。
- 退職所得
- 山林所得
- 分離課税の土地建物等の譲渡に係る譲渡所得
- 分離課税の土地や譲渡等に係る事業所得や雑所得(不動産業者等が土地を譲渡した場合に係るものですが、平成12年12月31日までは総合課税されます。)
C 税率
所得税額は、課税所得金額に税率を乗じて計算されますが、この税率も次のように2つがあります。
・超過累進税率
超過累進税率とは、所得の多い人には高い税率を、所得の少ない人には低い税率を使用して計算される税率をいいます。
この超過累進税率は、総合課税される所得に対して使用されます。
・ 所得税の税額票(超過累進税率表)
課税総所得金額等(A) |
税額の速算式 |
330万円以下 |
A×10% |
330万円超 900万円以下 |
A×20%−33万円 |
900万円超 1,800万円以下 |
A×30%−123万円 |
1,800万円超 |
A×37%−249万円 |
・特別税率
特別税率とは、超過累進税率と異なり、一定の税率が決まっているものをいいます。この特別税率を使用する所得は、前記 B の分離課税されるもののうち、土地建物等の譲渡所得等に用います。これらの所得は、所得の特殊性を考慮して、超過累進税率によらず、特別税率により所得税を計算することとなります。
・源泉分離課税
課税方法は、総合課税と分離課税の2つがあることを述べましたが、詳しく分けるともうひとつ「源泉分離課税」という方法があります。源泉分離課税制度とは、所得に対し税金を源泉徴収し課税関係が完了する方法です。源泉分離課税できる所得には、利子所得・一定の配当所得・株式等の譲渡所得等があります。
税率は、3.6%から7.3%までとなっています。
[6]納付する税額
A 算出税額
前記[5]の「総合課税」「分離課税」により計算した金額が、所得税法でいう算出税額となります。
B 税額控除
税額控除とは、二重に税金がかかるのを避けるため等にもうけられているもので、配当控除、住宅借入金(取得等)特別控除、政党等寄付金特別控除等があります。
C 納付すべき税額
上記AからBを差し引くと納付すべき税額が求められます。
D 源泉所得税
これはあらかじめ利子・配当・給与・報酬等のように支払う際に所得税を差し引くものです。
E 予定納税
これは毎年確定申告をしている人が、年に一度確定申告の時にまとめて税金を納めるのを避けるために、昨年の税金を基にして、分割して税金の一部を納める方法です。
F 申告により納付する税額
上記CからDとEを差し引くと今回の確定申告により納付しなければならない税額を求めることができます。この金額を今回の申告により納付します。金額がマイナスになった場合には還付を受けることになります。
5-3 所得金額の計算
所得税を計算していく上で、第一ステップは「各種所得の金額」の計算することからはじまります。
その計算の対象となる所得は、次の算式が基礎となっています。
上記の算式を基として、各種所得の金額は、次のように計算します。
各種所得の金額 |
計 算 方 法 |
1 |
利子所得の金額 |
収入金額 |
2 |
配当所得の金額 |
収入金額−その元本を取得するために要した負債利子
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3 |
不動産所得の金額 |
総収入金額−必要経費 |
4 |
事業所得の金額 |
総収入金額−必要経費 |
5 |
給与所得の金額 |
収入金額−給与所得控除額または実際の支出経費額(特定支出)のいずれか大きい金額 |
6 |
退職所得の金額 |
(収入金額−退職所得控除額)×1/2 |
7 |
山林所得の金額 |
総収入金額−必要経費−特別控除額 |
8 |
譲渡所得の金額 |
総収入金額−(取得費+譲渡費用)−特別控除額
*総合課税の長期のものは上記で計算した金額に1/2を乗じた金額となります
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9 |
一時所得の金額 |
(総収入金額−その収入を得るために支出した金額−特別控除額)×1/2 |
10 |
雑所得の金額 |
公的年金の収入金額−公的年金控除額+総収入金額−必要経費 |