1-5 損害保険料
[1]取り扱い
損害保険料とは建物等の火災保険等の保険のために支出したものをいいます。建物等の損害保険料は以下のように取り扱います。
その所得を生じる事業等に係わる保険料→必要経費算入
住宅用の建物等が係わる保険料→損害保険料控除
[2]前払保険料
損害保険料では、1年払いではなく3年とか10年の長期の期間に係わる保険料を支払うことがあります。(長期一括払いですと、年払いより保険料の割引がある場合がありますので、加入の際は検討してみてください)。
この場合、その保険期間が1年超になる長期保険については、次の算式によりその年分に相当する期間のみの部分を必要経費とします。
※ ただし、支払日からの保険期間が1年以内のものに継続して加入している場合には、
月数按分する必要なく全額を必要経費に算入します。
[3]満期返戻金がある長期損害保険
満期返戻金があるということは、保険料のうち返戻金に相当する部分については、積立てているのと同じものと考えられます。
そのため、満期返戻金に相当する損害保険料は、必要経費にするのではなく「積立保険料または保険積立金」勘定を使用して資産計上をします。
長期損害保険料で、このように満期返戻金があるものは、以下のように取り扱います。
その満期返戻金に相当する部分→積立保険料または保険積立金として資産計上
いわゆる掛捨て保険に相当する部分→その年の必要経費となる
※ 満期返戻金に相当する部分は、契約した保険の内容により異なりますので、保険加入の際に確認してください。
1-6 優良賃貸住宅等の割増償却
新築の賃貸住宅を取得した場合または新しく建築した建物を賃貸用に供した場合で、一定の要件に該当する時は、通常の減価償却費とは別に、割増償却費がその不動産所得の必要経費として計上することができます。
[1]優良賃貸住宅の範囲
特定有料賃貸住宅 |
ただし、平成6年4月1日から平成14年3月31日までの期間に取得・新築した場合 |
三大都市圏の共同住宅等 |
ただし、平成7年4月1日から平成14年3月31日までの期間に取得・新築した場合 |
[2]割増償却費の計算(平成12年4月1日以降)
特定有料賃貸住宅 |
普通償却費×44%(その資産の耐用年数が35年未満の場合は32%) |
三大都市圏の共同住宅等 |
普通償却費×44%(その資産の耐用年数が35年未満の場合は32%) |
[3]対象家屋
- 床面積が50以上125
以下であること
- 従業員の居住用に供されていないこと
- 造りが耐火構造または準耐火構造であること等のいくつかの要件を満たしているもの
[4]償却期間
この割増償却は、賃貸用に供した日以降5年以内で、その用に供していた期間に限ります。
[5]申告上の注意点
- 青色申告者に限らず白色申告者でも適用できます。
- この規定を適用しようとする人は、適用家屋になるか確認してください。適用する時は、建築基準法による「確認通知書」の写し等の一定の書類が必要です。
- 割増償却するかどうかは、その年ごとに判断できます。
- 取得時期により償却率は違います。これを取得時期と耐用年数を基礎とすると、次のようになります。
耐用年数 |
 |
H6.4.1〜 H7.3.31 |
H7.4.1〜 H8.3.31 |
H8.4.1 〜H10.3.31 |
H10.4.1〜 H12.3.31 |
H12.4.1 〜H14.3.31 |
35年以上 (45年以上) |
新築賃家住宅 |
30% |
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優良賃家共同住宅 |
70% |
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特定優良賃家住宅 |
70% |
70% |
65% |
55% |
44% |
三大都市圏の共同住宅等 |
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70% |
70% |
55% |
44% |
35年未満(45年未満) |
新築賃家住宅 |
15% |
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優良賃家共同住宅 |
50% |
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特定優良賃家住宅 |
50% |
50% |
47% |
40% |
32% |
三大都市圏の共同住宅等 |
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50% |
50% |
40% |
32% |
※平成10年3月31日以前については、耐用年数35年を45年と読み替えてください。
1-7 借入金利子と損益通算
[1]借入金利子の必要経費算入
アパート・マンションを建築するために金融機関より借入れた借入金の利子については、その不動産所得の金額の計算上、必要経費に算入されます。
- 建物の一部を自分の住宅とした場合には、その自宅部分に対応する借入金利子は必要経費とならず、家事費として「事業主貸」勘定で処理します。
- 借入金の元本返済分は、借入金という負債の返済であり経費とはなりません。
[2]不動産所得の損益通算
不動産所得が赤字となった場合、損益通算(赤字と黒字の合わせること)できる場合とできない場合があります。
できない場合 |
業務の用に供する土地の取得に係る借入金の利子に相当する金額については、損益通算の対象とはなりません。
借入金が土地の取得に係るものだけでない場合には、以下の基準で該当する借入金の利子を求めます。 |
できる場合 |
上記以外の場合 |
● 借入金利子の按分手続(土地・建物を取得した場合)
- 不動産所得に係わるものとそれ以外のものに係わるものとで按分します。
- 借入金利子の必要経費算入の借入金利子のうち、土地・建物に係る部分とそうでないものとで按分します。
● 按分方法
- 借入金利子の必要経費算入の按分は、面積等により按分します。
- 不動産所得の損益通算の按分は、借入金の資産明細ごと(借入金の契約)に按分します。
ただしこの按分が困難な場合は、借入金を最初に建物の取得に充当し、残額を土地に充当するものとして按分を行います。
[3]申告上の注意点
土地等に係わる借入金利子に対応する赤字部分は、他に不動産所得がある場合は、その不動産所得での黒字と赤字とを合わせること(内部通算)することはできます。
1-8 その他
不動産所得に関係するものでも、事業所得に関係するものがあり、次の取り扱いに関しては、「事業にかかる税金」を参照してください。
- 事業専従者控除(青色専従者給与を含む)
- 減価償却費と特別償却等
- 修繕費と資本的支出
- 繰延資産の償却
- 家事関連費及び生計を一にする親族に支払う費用
- 租税公課
- 青色申告特別控除