法人税の所得金額を計算する上で必要な「益金の額」及び「損金の額」についてその内容を見ていきましょう。これらの調整は、基本的に別表四「所得の金額の計算に関する明細書」で行います。
益金の額
(1)益金の額の計算
益金の額の計算は、次の算式のとおりでしたね。
益金の額 = 企業会計の収益 + 益金算入額 ― 益金不算入額
(2)益金の額の意味
益金の額とは、法人税法において「別段の定め」がある場合を除き、次のような取引から生じるその事業年度の収益の額をいいます。
- 資産の販売
- 有償・無償による資産の譲渡又は役務の提供
- 無償による資産の譲り受け
- その他の取引で資本等取引以外のもの
つまり「別段の定め」があるものを除き、資本等取引以外の取引(損益取引)から生じる収益が、益金の額になります。例えば、企業会計上の収益である商品の売上・固定資産の売却等が益金にあたります。
※企業会計との相違点
法人税上の益金は、会計上の収益を基礎としていますが、異なることがあります。それは、無償による資産の譲渡・無償による役務の提供・無償による資産の譲り受けについて、企業会計では収益計上されませんが、法人税では益金計上しなければならないことです。
(3)資本等取引の意味
上記の「資本等取引」とは、次の取引をいいます。
- 法人の資本等の金額(資本の金額又は出資金額と資本積立金との合計額を言います)の増加、または減少の生じる取引。
- 法人が行う利益、または剰余金の分配(中間配当による金銭の分配を含む)。
(4)別段の定め
益金の額を計算する上で「別段の定め」があるものは、法人税法上、益金算入と益金不算入による調整を行う項目です。
- 益金算入(加算項目)
この項目は、会計上は収益になりませんが、法人税上益金となるものです。
- 法人税額から控除する外国子会社の外国税額
- 国庫補助金等にかかる特別勘定の取崩額等
- 組織変更に伴う評価替え等による資産の評価益
- 退職給与引当金等の引当金の取崩額又は目的外取崩額
- 益金不算入(減算項目)
この項目は、会計上は収益になりますが、法人税上益金とならないものです。
- 受取配当等
- 資産の評価益(益金に算入される前記?に該当するものを除く)
- 還付金等
- 合併差益金のうち被合併法人の利益積立金からなる部分
以上、「企業会計上の収益の額」と「益金の額」との関係を示すと下の図のようになります。
損金の額
(1)損金の額の計算
損金の額の計算は、次の算式のとおりでしたね。
損金の額 = 企業会計の費用・損失 + 損金算入額 ― 損金不算入額
(2)損金の額の意味
損金の額とは、法人税法において「別段の定め」がある場合を除き、次のような金額を言います。
- その事業年度の収益に係る売上原価、完成工事原価等の原価の額
- その事業年度の販売費、一般管理費その他の費用の額(償却費以外の費用でその事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く)
- その事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るもの
つまり「別段の定め」があるものを除き、資本等取引以外の取引(損益取引)から生じる費用、損失が、損金の額になります。例えば、企業会計上の売上原価、旅費交通費、水道光熱費・給料等があたります。
(3)債務確定基準
法人税の損金の額となる販売費・一般管理費その他の費用は、償却費を除き、法人の期末までに債務の確定しているものに限られます。債務の確定していないものについては、法人の意思によって自由に金額設定ができてしまいます。これを排除することにより、課税の公平性を保とうとするものです。
(4)別段の定め
損金の額を計算する上での「別段の定め」があるものは、法人税法上、損金算入と損金不算入による調整を行う項目です。調整を必要とする主なものは、次のとおりです。
- 損金算入(減算項目)
この項目は、会計上費用になりませんが、法人税上損金となるものです。
- 国庫補助金等で取得した固定資産等の圧縮額
- 国庫補助金等にかかる特別勘定の金額
- 資産整理に伴う私財提供等があった場合の欠損金
- 収用・換地処分等の特別控除等
- 損金不算入(加算項目)
この項目は、会計上費用になりますが、法人税上損金とならないものです。
- 資産の評価損(災害等の一定の場合を除く)
- 過大な役員報酬、役員賞与、過大な役員退職金
- 寄附金の損金不算入額
- 法人税額等(法人税・住民税・罰金等)
- 減価償却費の償却超過額
- 貸倒引当金等の引当金の繰入超過額等
以上、「企業会計上の費用・損失の額」と「損金の額」との関係を示すと下の図のようになります。
本書の対象となる決算月(一年決算の場合)
この「税務申告」の内容は平成13年3月〜平成14年2月が決算月となる法人を対象としています。税制に関する法令等は改正されることが多いため、必ず対象となる決算月を確認してください。
なお文書内容は平成12年9月現在の税法等に基づいて作成されています。
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