決算利益に加算項目の「益金算入・損金不算入」と減算項目の「益金不算入・損金算入」を調整し、課税標準である課税所得を計算します。この重要な計算は、別表四を通して行われます。別表四は、形こそ違いますが、企業会計上の損益計算書と同様の機能を持ち合わせているため、「税務損益計算書」とも呼ばれています。
また、別表四では調整項目(総額)について「留保」「社外流出」の2つに区分されています。このことにより、当期に留保された金額(利益積立金額)を計算することになります。この計算をするのが別表五(一)です。
課税所得金額の計算
以下の例から所得金額を求めてみましょう。
- 当期利益 4,500,000円
- 交際費の損益不算入額 800,000円
- 前期の減価償却超過額の当期認容額 400,000円
- 受取配当金の益金不算入額 200,000円
- 売上計上洩れ 250,000円
- 前期確定申告による税額
法人税 2,000,000円、都道府県民税 150,000円、市町村民税 300,000円
- 中間申告による税額
法人税 3,000,000円、都道府県民税 150,000円、市町村民税 350,000円
- 当期確定申告による税額
法人税 3,500,000円、都道府県民税 250,000円、市町村民税 550,000円
(注)前期確定申告による税額は、未払法人税等(納税充当金)からの支出であり、当期の中間申告の税額は、租税公課で処理している。なお、当期の確定税額に対応すべき税額についての引当計上は行っていない。
当期利益 |
4,500,000円 |
加 算 |
交際費の損益不算入 |
800,000円 |
損金の額に算入した法人税 |
3,000,000円 |
損金の額に算入した住民税 |
500,000円 |
売上計上洩れ |
250,000円 |
小計 |
4,550,000円 |
減 算 |
減価償却超過額の当期認容額 |
400,000円 |
受取配当金の益金不算入額 |
200,000円 |
小計 |
600,000円 |
所得金額 |
8,450,000円 |
留保と社外流出
(1)留保の意味
「留保」とは、文字どおり、申告調整による加算項目と減算項目の金額のうち法人内部に留まっている金額をいいます。つまり、法人税の利益積立金額(法人税の利益剰余金)を増加させたり、減少させたりするものです。
例えば、減価償却の償却超過額について考えてみましょう。法人の決算において超過額を含めた金額を費用として処理しますが、法人税においては、超過額分については損金不算入としなければなりません。つまり、その分は加算項目に該当します。減価償却は、支出を伴わない費用なので損金不算入相当分は、所得金額が増加し、その分が法人の内部に留まることとなり、結果として利益積立金額が増加することとなります。
(2)社外流出の意味
「社外流出」とは、企業会計の利益処分による配当金・役員賞与のように法人内部に留まらず外部に流出するものを言います。実際には、申告調整による加算項目と減算項目のうち留保以外のものを言います。つまり、この事項は、法人税の利益積立金額に影響をおよぼさないものになります。
例えば、交際費等の損金不算入額について考えてみましょう。法人の決算においては、全額費用として処理します。しかし、交際費等はその全額を損金として扱うことはできません。当然損金不算入となる部分が出てきます。この損金不算入に相当する部分は所得金額が増加することになります。しかし、交際費等の額は、支出を伴う費用なので、その分が社外に流出することになります。その結果、利益積立金額は、そのままの金額となります。
※ 社外流出には、「本来の会社の外に出る流出」と「留保にならないもので便宜上の流出」の2つからなります。これは、別表四において便宜上の社外流出には社外流出欄に「※」が、記載され、区分されております。
留保にならないもので便宜上の流出になるものは、次のようなものがあります。
- 受取配当等の益金不算入
- 所得税額及び欠損金の繰戻しによる法人税の還付額
- 新規取得土地等に係る負債利子の損金不算入
- 青色申告書を提出した事業年度の繰越欠損金の損金算入
- 技術等海外取引に係る所得の特別控除
- 収用換地による所得の特別控除等
先ほどの例題で「別表四」を作成すると次のようになります。
本書の対象となる決算月(一年決算の場合)
この「税務申告」の内容は平成13年3月〜平成14年2月が決算月となる法人を対象としています。税制に関する法令等は改正されることが多いため、必ず対象となる決算月を確認してください。
なお文書内容は平成12年9月現在の税法等に基づいて作成されています。
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